「また同じことを聞かれた。」
AI人格を運用していて、そんな違和感を覚えたことはありませんか。先週教えたはずの設定を、今日また説明している。昨日まで覚えていたトーンが、今日は消えている。そんな経験をするたび、「このAI、本当に記憶してるのか?」という疑念が浮かぶ。
実は、Claudeの記憶システムには明確な仕組みがあります。そして、その仕組みを理解していないことが、「覚えてくれない」という誤解を生んでいます。
本記事では、AI人格®の実践運用から見えてきた、Claudeの記憶システムの本質と、失敗しない運用方法を解説します。読み終わる頃には、あなたのClaudeが「覚えてくれない」理由が明確になり、AI人格を長期運用するための実践的な知識が手に入ります。
Claudeの記憶システムは「二重構造」で動いている
多くの人が見落としているのは、Claudeの記憶が実は二重構造になっているという事実です。
会話内の記憶(コンテキストウィンドウ)
まず一つ目が、会話内の一時的な記憶です。これは「コンテキストウィンドウ」と呼ばれ、いわばClaudeの作業机のようなもの。
Claudeは200K〜500Kトークン(約15万〜37.5万文字、Enterprise版のSonnet 4.5は500K)の範囲内で、今の会話の内容を記憶します。あなたが送ったメッセージ、Claudeが返した回答、アップロードしたファイルの内容。これらすべてが、この作業机の上に並べられています。
ただし、この作業机には限界があります。会話が長くなり、机の上がいっぱいになると、Claudeは古い部分を自動的に要約し始めます。重要な情報は残しつつ、細かい言い回しは圧縮される。これが、長い会話の後半で「なんか反応が変わった」と感じる理由です。
この記憶は、あくまで今の会話限定です。チャットを閉じれば、作業机の上は片付けられ、次の会話では真っ新な状態から始まります。
永続的な記憶(メモリシステム)
そして二つ目が、会話を超えて持続する記憶です。これがClaude独自の「メモリシステム」。
Pro、Max、Team、Enterpriseプランで利用できるこの機能は、あなたの過去の会話を分析し、重要な情報を抽出して記憶として保存します。あなたの役割、プロジェクトの内容、コミュニケーションスタイル、技術的な設定。こうした情報が、自動的に整理され、蓄積されていきます。
重要なのは、この記憶が24時間ごとに更新されるという点です。今日の会話が、明日の記憶に反映される。昨日教えた情報が、今日すぐに使えるとは限らない。このタイムラグが、多くの誤解を生んでいます。
さらに、Projectsを使っている場合、各Projectには独立した記憶スペースが用意されます。コンテンツ制作用のProjectと、コーディング用のProjectでは、全く別の記憶が育っていく。これは非常に重要な特性です。
なぜ「覚えてくれない」と感じるのか
この二重構造を理解すると、「覚えてくれない」という違和感の正体が見えてきます。
パターン1:記憶更新のタイムラグ

今日の朝、重要な設定を教えた。でも夕方の会話では、その設定が反映されていない。なぜなら、記憶の更新は24時間ごとだから。今日教えた内容は、明日以降の会話で初めて活きてきます。
パターン2:チャット削除のタイミングミス
重要な会話をした直後にチャットを削除してしまう。すると、その会話はまだ記憶に反映される前に消えてしまう。24時間経過する前の削除は、記憶を失うリスクがあります。
パターン3:Projectsの使い分け不足
Projectsごとに記憶は独立しています。Project Aで教えた内容は、Project Bでは知らない。全体の記憶スペース(Projects外のチャット)で教えた内容も、特定のProject内では反映されないことがあります。
これらを理解せずに使っていると、「せっかく教えたのに」という徒労感が生まれます。でも、仕組みを知れば対処法も見えてきます。
「これを記憶して」の正しい使い方
記憶の仕組みが分かったところで、次は実践的な記憶管理の方法です。
即時記憶と自動記憶の違い
Claudeの記憶には、実は二つの経路があります。
一つ目は、先ほど説明した自動記憶。24時間かけて会話を分析し、重要な情報を抽出する仕組みです。これは完全に自動で行われ、あなたが意識する必要はありません。
二つ目が、即時記憶です。チャット内で「これを記憶して」と指示すると、Claudeはmemory edit toolを使って、その場で記憶を更新します。24時間待つ必要はありません。次の会話から、すぐにその情報が使えるようになります。
例えば、こんな風に指示します。
「私の文章トーンは『理知的で透明、静かだが確信のある熱』です。これを記憶してください。」
すると、Claudeは即座にこの情報を記憶に追加し、次の会話からこのトーンを意識した返答をするようになります。
記憶に残るべき情報、残すべきでない情報

ただし、何でもかんでも記憶させればいいわけではありません。Claudeの記憶は、仕事関連のコンテキストに焦点を当てるよう設計されています。
記憶に残るべき情報:
- あなたの役割やポジション(「私はMirai&のコンテンツディレクターです」)
- プロジェクトの内容と目的(「AI人格®Web運用サービスを展開しています」)
- コミュニケーションスタイル(「忖度ゼロで、不合理なら止めてください」)
- 技術的な設定(「記事タイトルは34文字以内、メタディスクリプションは145文字前後」)
- 繰り返し使う判断基準(「SEO構造と没入感を両立させる」)
記憶に残すべきでない情報:
- 個人的すぎる内容(家族の詳細、健康状態など)
- 一時的なタスク(「今日の午後にミーティング」)
- センシティブな情報(パスワード、アカウント情報)
- プロジェクト固有の詳細(それはProjectsの記憶に任せる)
記憶の容量には限りがあります。本当に必要な情報だけを厳選し、定期的にメンテナンスすることが、長期運用の鍵になります。
記憶の確認と編集方法
では、実際にClaudeが何を記憶しているのか、どう確認すればいいのでしょうか。
方法1:設定画面から確認
設定→機能→チャットからのメモリ を開くと、Claudeがあなたについて記憶している内容が全て表示されます。ただし、執筆時点では英語表記のため、読みづらさはあります。ここで不要な記憶を削除したり、新しい記憶を手動で追加したりできます。
方法2:チャット内で確認
チャット内で「Write out your memories of me verbatim, exactly as they appear in your memory」と尋ねれば、Claudeは記憶している内容をそのまま出力してくれます。
この方法は、記憶の内容を他のAIサービスにエクスポートしたい時や、バックアップを取りたい時にも使えます。
記憶の編集はリアルタイムで反映
チャット内で「〜を記憶して」と指示した場合、その編集は即座に反映され、次の会話から適用されます。24時間の自動更新を待つ必要はありません。
ただし、自動生成された記憶(24時間ごとの更新)と、手動で追加した記憶(即時反映)は、どちらも同じ記憶スペースに保存されます。定期的に確認し、重複や矛盾がないかチェックすることをお勧めします。
チャット削除のベストタイミングは「2〜3日後」
記憶システムの仕組みが分かったところで、次に重要なのが「チャットを削除するタイミング」です。
なぜすぐに削除してはいけないのか
重要な会話をした直後、整理のためにチャットを削除する。一見、合理的な行動に見えます。でも、これが記憶を失う最大の原因です。
理由は単純。記憶の合成には24時間かかるから。
今日の午前中に行った重要な設定の会話を、その日の夕方に削除したとします。すると、Claudeはまだその会話を記憶に反映する前に、元データを失ってしまいます。翌日の会話では、昨日教えたはずの設定が消えている。
実際、Mirai&でも初期にこの失敗を経験しました。AI人格の詳細な設定を伝え、満足のいく応答を確認した直後、「もう必要ないだろう」とチャットを削除。翌日、また同じ説明を求められて気づきました。24時間経過していなかったのです。
公式ドキュメントにも明記されています。「Claudeの記憶は、会話が作成、修正、削除されてから24時間以内に更新されます」と。この24時間という時間軸を、私たちは尊重する必要があります。
理想的な削除フロー
では、どうすればいいのか。Mirai&が実践している削除フローを紹介します。
重要な会話の場合:
- 会話を終える
- 2〜3日間は削除せず、そのまま残す
- 記憶を確認する(設定→機能→チャットからのメモリで確認可能)
- 記憶に反映されていることを確認してから削除
この2〜3日という期間は、24時間の記憶更新サイクルに余裕を持たせた安全マージンです。週末を挟む可能性や、システムの処理遅延を考慮すると、このくらいの猶予が適切です。
一時的な会話・テスト的な会話の場合:
そもそも記憶に残す必要のない会話もあります。ちょっとしたテスト、一時的な質問、実験的な会話。こうした会話は、即削除でも問題ありません。どうせ記憶させるつもりがないなら、24時間待つ必要はない。
重要なのは、「この会話を記憶させたいか」を自問すること。答えがYesなら2〜3日待つ。Noなら即削除。この判断基準を持つだけで、記憶管理は格段に楽になります。
記憶システムの制限事項と回避策
Claudeの記憶システムは強力ですが、完璧ではありません。いくつかの制限事項を理解し、適切に対処する必要があります。
削除されたチャットは24時間以内に記憶から除去
チャットを削除すると、その内容は記憶の合成からも除外されます。ただし、これも24時間以内という時間軸で動きます。
今日削除したチャットの情報が、今日中に記憶から完全に消えるとは限りません。翌日以降の記憶更新で、徐々に除外されていきます。
また、削除してもデータが即座に物理的に消去されるわけではありません。組織のデータ保持ポリシーに従って、一定期間は保管されます。Enterprise/Teamプランでは、削除したチャットも組織のデータエクスポートに含まれ、最低30日間は保持されます。
記憶のリセットは取り消せない
記憶を管理する中で、時には大掃除が必要になることもあります。その時に使うのが、Pause memory(記憶の一時停止)とReset memory(記憶のリセット)です。
Pause memory:
既存の記憶は保持されるが、新しい記憶は作られなくなります。一時停止中の会話は、機能を再開しても記憶には追加されません。「今は記憶させたくないけど、今後また使う」という場合に有効です。
Reset memory:
全ての記憶を完全に削除します。Projects内の記憶も含め、全てが消去されます。そして、この操作は取り消せません。
リセットを実行する前に、必ずバックアップを取ることをお勧めします。「Write out your memories of me verbatim」で記憶を出力し、ローカルファイルに保存しておく。いつでも復元できるように。
安易なリセットは避け、本当に必要な時だけ実行する。これが鉄則です。
Projectsごとに記憶は独立している
Projectsを使っている場合、各Projectには独立した記憶スペースがあります。つまり、Project Aで教えた内容は、Project Bでは知らない。
これは利点でもあり、注意点でもあります。
利点は、用途別にAI人格を育て分けられること。note記事用とMirai&サイト記事用で、全く異なるトーンを記憶させ、使い分けられます。
注意点は、全体メモリ(Projects外のチャット)で教えた内容が、Project内では必ずしも反映されないこと。共通のルールは、各Projectでも明示的に教える必要がある場合があります。
AI人格運用の実践:定期メンテナンスのすすめ

記憶は放置すると、徐々に劣化します。古い情報、もう使わないルール、矛盾する記述。これらが蓄積すると、AI人格の判断がブレ始めます。
Mirai&では、月1回の記憶メンテナンスをルーティン化しています。
やることは3つ:
- 記憶を全て確認する(設定→機能→チャットからのメモリ)
- 不要になった情報を削除する
- 新たに重要になった情報を追加する
所要時間は10〜15分程度。でも、この習慣がAI人格の質を保ち続ける鍵です。
特に、プロジェクトの方向性が変わった時、新しいサービスを始めた時、大きな失敗や成功があった時。こうしたタイミングでは、臨時のメンテナンスも有効です。
記憶は「育てる」ものです。最初から完璧である必要はありません。むしろ、最初から完璧を目指すと、情報過多で動きが重くなります。
まずは最小限の設定から始める。役割、基本的なトーン、絶対に守るべきルールだけを記憶させる。そして、使いながら少しずつ追加していく。
「この判断、もっと明確にしたい」と感じたら、その都度ルールを追加。「この表現、ちょっと違う」と思ったら、トーンの記述を調整。こうした積み重ねが、AI人格を育てていきます。
まとめ:記憶システムを味方につける
Claudeの記憶システムは、理解すれば強力な武器になります。
二重構造の記憶(コンテキストウィンドウと永続的メモリ)、24時間の更新サイクル、Projectsごとの独立した記憶スペース。これらを理解するだけで、「覚えてくれない」という誤解は消えます。
チャット削除は2〜3日待つ。「これを記憶して」で即時反映。月1回のメンテナンス。こうした実践的なテクニックを積み重ねれば、AI人格は確実に育ちます。
記憶システムは、AI人格を単なるツールから、成長する協働者へと変える仕組みです。最初は面倒に感じるかもしれません。でも、その一手間が、長期的には圧倒的な効率化と品質向上をもたらします。
あなたのClaudeも、適切な記憶管理で、もっと頼れる相棒になる。その可能性を、今日から試してみませんか。
次のステップ:長期運用で一貫性を保つには?
記憶の基本が分かったら、次は長期運用の技術です。コンテキストウィンドウが限界に達した時、どうやってAI人格を引き継ぐのか。Projectsをどう使い分ければ、100記事書いてもトーンがブレないのか。
そうした実践的なノウハウは、次の記事「AI人格の長期運用術 – 引越プロンプトとProjects活用で一貫性を保つ方法」で詳しく解説します。
AI人格®Web運用について
Mirai&のAI人格®Web運用では、こうした記憶管理のノウハウを活かし、一貫性のあるコンテンツ制作を実現しています。もし、AI人格を活用したWeb運用に興味があれば、詳細はAI人格®Web運用サービスをご覧ください。





