45,830件。1975年から2026年7月までに、日本列島の下で観測された地震の数です。一件ごとに緯度・経度・深さの座標が付いています。この公開データだけを使って、日本列島の下へ斜めに沈み込む板の姿を、ブラウザの中で立体的に見えるようにしました。先に現物を見てください。
Claude Code(生成AIでプログラムやデータ処理を組み立てる開発ツール)のOpus 5を使い、データの取得から描画まで組みました。この記事に書くのは完成品の説明だけではありません。途中で画面が真っ暗になった失敗と、その原因を数字で突き止めた過程まで残します。読み終えたあとに手元に残るのは地震の知識ではなく、自社のサーバーで眠っているデータの使い道です。
なぜ経営者が「データの3D可視化」に注目すべきか
オープンデータとは、誰でも利用できる形で公開されている統計・観測データです。国や研究機関が無料で開放しているものが数多くあります。
地震データの可視化と聞いて「うちの商売には関係ない」と思ったなら、一旦立ち止まって考えてみてください。
中小企業の現場には、POSレジの売上履歴、顧客名簿、問い合わせのログ、アクセス解析の数字が積み上がっています。その大半は誰にも見られないまま眠っています。担当できる人がいない、専門知識がない、時間がない。この3つが重なって、データはただのファイルとしてサーバーの中で増え続けます。
放置されたデータは負債ではなく、まだ掘り出していない資産です。今回の題材も、出発点は特別な観測装置ではなく、誰でもアクセスできる公開データでした。条件でいえば自社のデータのほうが上です。自分の事業で起きた出来事と、そこに貯まる数字は、他社が手に入れられない一次情報だからです。
自社のどのデータが使えるのかを先に知りたい方は、AI人格® Web運用の無料診断で現状の棚卸しからご相談いただけます。
記事のネタの見つけ方|事業で直面したことが最強のコンテンツになる理由
生のデータをそのまま眺めても、たいていは何も見えません。次は、その「見えなさ」を実際の数字で確かめます。
USGSの公開地震データ45,830件から、日本列島の下の断面を描く
サブダクション(沈み込み帯)とは、海側のプレートが大陸側のプレートの下へ沈み込んでいく境界です。日本列島の下では、この沈み込みが今も続いています。
材料は、USGS(米国地質調査所)が公開している地震カタログです。FDSN event APIという、誰でも呼び出せる公開の窓口から取得しました。条件は次のとおりです。
- 対象範囲: 北緯24〜48度・東経126〜150度、マグニチュード4.0以上
- 期間: 1975年1月1日から2026年7月24日まで
- 件数: 45,830件(同じ地震の重複IDを除去、深さ700kmを超えるものは除外)
- 深さの範囲: 0〜686km
この期間で最大の地震は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震です。マグニチュード9.1、北緯38.297・東経142.373、深さ29km。あの日の記録も、45,830件のうちの一行として同じ形式で収まっています。陸と海の位置関係を示す海岸線には、Natural Earthの公開地図データ(ne_10m_coastline)を使いました。
技術は身軽に組みました。WebGL2というブラウザ標準の描画のしくみを、外部ライブラリを一切使わず直接動かしています。45,830個の点は、後述するビルボードquadという手法でまとめて描き、重なった光を足し合わせて発光させています。ファイルはHTML1枚で1.18MB(圧縮後434KB)。外部サーバーを参照しないため、ネットにつながっていなくても動きます。写真1枚ぶんの容量に、半世紀分の記録が丸ごと入っている計算です。
材料はこれで揃いました。ただ、45,830件をそのまま画面に打ち出しても、意味のある形は浮かびません。データには、放っておくと人を誤解させる偏りがあります。
データの偏りをそのまま見せると誤解を生む|傾斜が実在する根拠

傾斜が実在する根拠とは、深さのデータを地域ごとに区切って集計し直したときに出てくる、比較可能な数値です。印象ではなく集計結果で確かめます。
45,830件には大きな偏りがあります。深さ50kmより浅い地震が全体の66.7%を占め、深さ100km以上の地震は15.3%(6,996件)しかありません。素直に全部を描けば、浅い場所の点が画面いっぱいに密集し、深い場所の点はほとんど見えません。そのまま見せると「地震は浅いところでしか起きていない」という、事実と違う印象を与えます。
そこで、深さを地域の帯ごとに区切って平均を取り直しました。東北日本にあたる北緯36〜44度の範囲で、東西方向に位置を分けます。このとき、深さ30kmより浅い地震は集計から外しています。
外した理由を書いておきます。内陸側の東経137〜138度には、深さ10km前後の地震と深さ250km前後の地震という、成り立ちの違う2種類が混ざっています。両方まとめて平均すると80kmになりますが、この帯には深さ60〜100kmの地震が1件もありません。つまり80kmという平均値は、地震が1件も起きていない深さを指してしまいます。板の傾きを見るために、地表近くの浅い地震を除いた数字が次の2つです。
- 東経143〜144度(太平洋側・東寄り)の平均深さ: 43km
- 東経137〜138度(内陸側・西寄り)の平均深さ: 201km
東から西へ進むほど、地震の起きる深さが増していく。43kmと201kmという差が、板が斜めに沈み込んでいる証拠です。
浅い地震を外したから差が出た、というわけではありません。1件も外さずに全部を平均しても、東から西へ順に深くなります。東経143〜144度が32km、142〜143度が46km、141〜142度が51km、140〜141度が62km、139〜140度が70km、138〜139度が78km、137〜138度が80km。傾斜そのものは、どちらの数え方でも消えません。やったのはデータの書き換えではなく、区切り方を決めて、外したものを書き残すことだけです。全体をまとめて眺めている限り、この差は最後まで見えませんでした。
同じことが自社のデータでも起こります。全店合算の売上では見えないものが、店舗別・時間帯別・客層別に区切り直した瞬間に出てきます。切り口を変える。操作としてはそれだけです。
構造が数字で確かめられても、人が見て理解できる画面にするまでには、もう一段の壁がありました。
gl.POINTSでは何も見えなかった|実測が導いた原因特定

ビルボードquadとは、見る人のほうへ常に正面を向くように描かれる小さな四角形です。この四角形一枚を光の粒に見立てて、45,830個ぶん並べています。
最初からこの方法だったわけではありません。当初は gl.POINTS という、点をそのまま打つ標準的なやり方で45,830点を描いていました。結果は、ほぼ真っ暗な画面です。半世紀分のデータを流し込んだのに、目の前にあるのは黒い長方形だけでした。
ここで「たぶん色が暗いんだろう」と決めつけて、色を明るくする手もありました。やらなかった。代わりに、画面のピクセル(画面を構成する一つひとつの点)の明るさを実際に測りました。平均輝度は255段階中8.7。明るく光っているピクセルは画面全体の0.54%。原因の見当をつける前に、症状のほうが数値になりました。
原因は、点を打つやり方そのものでした。gl.POINTSは点の大きさを指定しても、パソコンやブラウザの環境によってその指定が無視されることがあります。今回は全部の点が1ピクセル以下まで潰れていました。1ピクセル以下の光の粒が数万個あっても、重なって発光する前に消えます。
実測しなければ、暗い画面を眺めながら色をいじり続けていました。
原因が数字で分かれば、打ち手は決まります。点を打つ方式をやめ、ビルボードquad、つまり必ず正面を向く小さな四角形を一つずつ並べる方式に作り替えました。四角形なら大きさを自分で制御できるので、環境に左右されません。そのうえで、重なった光を足し合わせる描き方(加算合成)に切り替えたところ、45,830個の粒が光を持ち、日本列島の下の構造が画面に浮かび上がりました。
効いたのは高度な技術ではありません。おかしいと感じたときに、見た目の印象で片付けず数字で裏を取ったこと。コードが読めるかどうかとは関係のない話です。
画面が見えるようになると、次は別の誘惑が来ます。もっと派手に、もっとドラマチックに見せたい、という誘惑です。
表現の誇張はどこまで許されるか|正直な演出設計
表現上の調整とは、データの値を変えずに、見やすさのために描き方だけを変える工夫です。値の改ざんとは、はっきり区別します。
深さ方向を引き伸ばせば、板の傾きは劇的に見えます。色を盛れば迫力も増します。問題は、それを黙ってやると見る人をだますことになる点です。そこで、手を加えた箇所は全部おもてに出しました。
- 深さ方向のみ、実際の1.3倍に強調して表示している(この事実は画面の右上に明記)
- 深い場所の点が浅い場所の光に埋もれないよう、深さに応じて点の明るさと大きさを上げている
- 位置・日付・規模の値そのものは一切いじっていない
見せ方は工夫する。事実は動かさない。工夫した箇所は画面に書く。この3つを守るかどうかが、可視化を「作品」で止めるか「信頼できる資料」にするかを分けます。
演出の順番にも、同じ基準を通しました。この作品は1ループ57秒の自動再生です。前半は全点を表示して構造をまず見せ、後半は1975年から発生順に点を積み上げながら、西暦と累積回数をカウントアップします。2011年3月11日に到達した瞬間、フラッシュと衝撃波が走ります。
この2部構成は、当初の案ではありません。最初は「1975年から積み上げる」場面を冒頭に置く予定でした。ところが深さ100km以上の地震は年間およそ136件しかなく、積み上げ方式では板の斜めの形が完成するまでに時間がかかります。冒頭の一番大事な数秒で、構造が見えない。そこで、前半で完成形を見せ、後半で積み上げ直す形に組み替えました。見せたい絵に合わせてデータを盛るのではなく、データの性質に合わせて見せる順番を変えた、ということです。
ここまでが、公開データ1本を作品にするまでにやった作業です。手順だけ抜き出せば、扱う対象が地震である必要はありません。
この発想は、自社の業務データにも使える
業務データの可視化とは、社内に貯まった顧客・売上・問い合わせなどのデータを、意思決定に使える形へ整理して見せることです。特別な観測データがなくても始められます。
今回の手順を4つに分解すると、そのまま自社のデータに移せます。
- 社内に眠っているデータを棚卸しする(POSレジ・顧客管理・GA4のアクセス解析・問い合わせログ・アンケート。まず「どこに何があるか」を書き出す)
- 生のまま人に見せない(gl.POINTSの真っ暗な画面と同じで、生データはたいてい誤解を生む)
- 見せる前に数字で裏を取る(輝度を実測したのと同じで、「本当にそう言えるのか」を集計で確かめる)
- 加工した箇所を明記する(「深さ方向のみ1.3倍」と書いたのと同じで、強調した部分を隠さない)
4つとも、必要なのはプログラミングではありません。棚卸しは表計算ソフトで足ります。切り口を変えた集計もピボットテーブルでできます。裏取りは「その数字をどの条件で出したか」を書き添えるだけ、明記は資料の隅に一行足すだけ。今日の午後から始められる作業です。
壁は、その先にあります。一度きりのデモなら、ここまでで完結します。継続的な業務として回すとなると、毎月のデータ取得、集計の切り口の統一、そのつどの裏取り、加工箇所の注記が、担当者の手作業として毎回のしかかります。専属の担当者を置けない会社は、ここで止まります。一度は自力でできる。続けるには、手順を人ではなく仕組みに預けるしかない。取得から集計、検証、注記までを定型の工程として固定し、担当者が代わっても同じ品質で出るようにする。そこがAI人格®を使った仕組み化の役割です。
継続運用をまかせた記録も、同じ実演形式で公開しています。
AI外部脳にX発信の2週間まかせた実演ログ|自動化と品質の実測
よくある質問
Q. Claude Codeで作った3D可視化は、実際に見られますか?
公開ページで確認できます。ブラウザでアクセスするだけで、日本列島の下に沈み込む板の動きを見られます。アプリのインストールは必要ありません。
日本列島の下には、斜めに沈む板がある
Q. この可視化で地震予知はできますか?
できません。1975年から2026年7月までに実際に観測された過去の公開データを、構造として見える形に並べ直しただけです。将来いつどこで地震が起きるかを予測する機能はなく、そうした主張もしていません。
Q. プログラミングの知識がなくても、同じ発想を自社の業務に使えますか?
使えます。核になるのは技術ではなく、「生のまま見せない・見せる前に検証する・加工した箇所を明記する」という3つの手順です。社内データの棚卸しから始められます。
Q. 使用したデータの出典は信頼できますか?
地震データはUSGS(米国地質調査所)が公開している地震カタログ、海岸線データはNatural Earthの公開データです。いずれも誰でもアクセスでき、記事内に出典を明示しています。
Q. こうしたデータ活用や可視化を、Mirai&に相談できますか?
できます。自社のどのデータが使えそうか、どう見せれば意思決定に効くかという段階から相談を受けています。AI人格® Web運用の無料診断で現状を整理するところから始められます。
まとめ
45,830件の公開データから日本列島の下の板を描くまでに効いたのは、高度な技術ではありませんでした。画面が真っ暗になったときに印象で片付けず、平均輝度8.7という数字で原因を突き止めたこと。深さ方向を1.3倍に強調したと画面に書いたこと。効いたのはこの2つです。道具がClaude Codeだったかどうかは本質ではありません。
疑い、検証し、正直に見せる。この3つは、地震データにも自社の売上データにも同じように効きます。眠っているデータは負債ではなく、まだ掘り出していない資産です。
同じくClaude Codeを使い、記事制作を仕組みにした事例も公開しています。
ClaudeのAI人格ライター「外部脳」でSEO記事を作成【プロンプト&画像付き】
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